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若竹七海棚 (2000.8.14 up)

『サンタクロースのせいにしよう』  連作短編集 7編を収録

<あらすじ>

 「失恋の傷を癒すには引越しだ」。わたしこと岡村柊子(しゅうこ)は、こんなキッカケからちょっと変わったお嬢さま・松江銀子さんの同居人となった。小奇麗な一戸建て。生活費は全て銀子さんが持ち、家事全般を担当するのが柊子。しかし、引越し当日、柊子は下駄箱の上に正座する半透明のおばあさん、いわゆる幽霊を目撃してしまう。でもまあ、柊子はこの家での生活を楽しんでいる。

 ≪あなただけを見つめる≫ 「小説すばる」 1992年8月号

 松江家では、祖父母が死ぬ前日、家に必ず謎の影が現れたという。影はうすぼんやりとしており、髪を逆立てているのものだとか。そんなことは単なる怪談話だと思っていた銀子さんだったが、ある日その影を目撃してしまう。そして次の日、一番上の姉・郁子が死んでしまったという。銀子さんから聞いた死を呼ぶ幽霊のお話。

 ≪サンタクロースのせいにしよう≫ 「小説すばる」 1993年1月号

 ご近所の鈴木さんには問題がある。鈴木さんは、ゴミの分別取り締まりに全力を傾けている。これは全然良い事なのだが、ゴミの中身チェックをするのだ。しかも、ゴミの中身について吹聴するのだからたまらない。ご近所中が迷惑していた。だがある日、柊子は悲鳴をあげる鈴木さんを目撃する。ゴミ袋の中に死体が入っていたというのだ。ただ、調べてみても死体は見つからない。死体はどこへ?

 ≪死を言うなかれ≫ 「小説すばる」 1993年4月号

 チューリップの花が消えた。草花の好きな原田さんの花壇から、チューリップのコーナーだけがぽっかりと、からっぽになってしまった。しかも球根ごと。チューリップのコーナーには、むき出しとなった土だけが残っていた。チューリップをまるごと奪ったことには訳がある?

 ≪犬の足跡≫ 「小説すばる」 1993年7月号

 それは夢から始まった。柊子は最近、犬の夢を見るようになっていた。そんな折、近所の浜田さんからこんな話を聞いた。山岡さんちがガレージを作ったそうなのだが、そこのコンクリートの上に犬の足跡がポンッとスタンプされていたという。どうもそこは、犬が入り込むような状況ではなかったそうなのだが、柊子はいまいち興味を持てなかった。柊子が興味をもったのは、ここに住んでいた前の住人のお話。もしかしたら、下駄箱の幽霊に関わりがあるのかもしれない。

 ≪虚構通信≫ 「小説すばる」 1993年10月号

 「わたし、殺されかけたんです」。突然の電話はそう言ってきた。そして、柊子の友人・彦坂夏見(ひこさかなつみ)の知り合いだと名乗った。一週間前、銀子さんの妹・卯子(うこ)さんが、手首を切って自殺した。柊子銀子さんもてんやわんやな時だった。その電話は、どうも卯子さんの自殺に関連しているらしい。

 ≪空飛ぶマコト≫ 「小説すばる」 1994年1月号

 銀子さん海外旅行。「そんなことは絶対に止めておけ、苦労するに決まっている」と、散々に言われながらも、柊子はこれを決行。そして、何故忠告を聞かなかったんだと後悔することとなった。その海外旅行でのお話。飛行機内でのこと。とてつもなくやかましげな日本人カップルがいた。聞いていてこっちが腹立たしくなったのだが、カップルの女性の行動がどうも奇妙。機体の前方にしょっちゅう足を運んでいるのだ。柊子は不快な想像にたどり着く。

 ≪子どものけんか≫ 「小説すばる」 1994年4月号

 夏見と銀子の兄・曽我竜郎とでやってきた公園。座った椅子には木製のテーブルがあって、良く見ると、ビスの抜けた穴に青いビー玉が。柊子はこれを取ろうと奮闘するが、どうも取れない。が、ここで不思議なことが。3人がちょっと目を話した隙に、椅子においていた竜郎のビデオカメラが傷と泥にまみれていたのだ。誰かのいたずらかと思ったが、周囲には誰もいない。唯一子供が通れそうな垣根があるのだが、子供がいたずらしたにしては、壊れ方が酷い。強い力がなければここまでにはならない。ビデオカメラは何故壊れたか?

<感想> ”ネタばれ”なしです。

 初めまして若竹七海さんとなりました。本書が若竹作品初挑戦となった一品です。題名から冬っぽいお話なのかなと想像していたんですが、そうでもなく、幽霊話の印象が強いせいか、夏っぽさを感じる短編集でした。ただ、初出誌の掲載月を見てみると、内容がそれぞれの季節にあっているのが分かります。そういう意味ではリアルタイムで読んでいた方はより楽しめたのかも。

 松江家の幽霊と姉の死を扱った「あなただけを見つめる」。謎の死体発見騒ぎの「サンタクロースのせいにしよう」。チューリップが根こそぎ消える「死を言うなかれ」。下駄箱の幽霊に迫る「犬の足跡」。一本の電話がもたらした事件「虚構通信」。飛行機内での奇妙な女性「空飛ぶマコト」。ビデオカメラとビー玉の謎の「子どものけんか」。収録作品は連作となっている以上の7編。

 あらすじを見てもらっても分かるように、本書はいわゆる「日常の謎」を扱っています。でも、少しだけ変わった趣向がありまして、連作短編集なのに、決まった探偵役がいないんです。主要な登場人物が何人かいるのですが、話ごとによって探偵役が持ち回り。察しの良い方は、お気付きになるかもしれませんが、これによって気の抜けないお話が何作か存在します。こういうお楽しみな趣向が良いなって思いました。

 さてさて、本書でお気に入りとなったお話は、表題となっている「サンタクロースのせいにしよう」「犬の足跡」かな。前者はミステリーとしても、どことなく宮部みゆきさんの短編を連想してしまうような真相にしても、最後の一行にしても、満足な作品。後者は、連作短編である本書の中でも、かなり重要となる謎に挑んでいるあたりが見所でした。

 全体的に見ると、すっきり後味良しというミステリーとはちょっと違っていて、なるべくなら知らないでおいた方が良かったかも、という真相が多かったかな。しかしながら、その分考えさせられるものが多いという点では収穫の大きい作品だし、悪意とは無縁でおっとりとした銀子さんや、さばさばしているけれども視点と意見が鋭い夏見などなど、柊子の周りには好感の持てるキャラが盛りだくさん。救いの部分も大きく取られていて、連作物としても魅力的で成功していると思います。

 ミステリーの見所のひとつに、「ラストの一行」というものがありますが、若竹さんはこれが華麗です。おおっ、て感心させられるものや、ゾッとさせられるもの、思わず苦笑だったり、ぐわっ、って衝撃を受けるものまで。若竹作品の魅力を早くも見つけさせてもらえました。

 お願いだから後ろから読まないで。最後まで油断できない連作短編集。そんな一冊です。

<今回の気になる一言>

 巡りあわせの悪さ、運の悪さにやつあたりができれば、どんなにひとは気楽になれるだろう。でもそういうわけにはいかないのだ。誰かのせいで、自分がこんな目に陥っているのだとわかれば、憎む相手がいれば、ひとは安らかに眠れる。

岡村 柊子

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